CellQualia

英国の公的幹細胞バンクと自動細胞培養装置の実証実験を開始

2022.09.15

 シンフォニアテクノロジー株式会社(代表取締役社長:平野新一、本社:東京都港区)は、英国医薬品・医療製品規制庁(Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency、略称MHRA、英国ハートフォードシャー)の下部組織であるUK Stem Cell Bank(略称:UKSCB)において、当社の自動細胞培養装置CellQualia™※1 Intelligent Cell Processing (ICP) Systemを使用した細胞製造の第三者による実証実験を7月13日より開始しました。
 

 UKSCBは英国を代表する公的幹細胞バンク(幹細胞を増やして広く配布する機関)で、細胞医薬品の原材料となるヒト多能性幹細胞として、主に胚性幹細胞(Embryonic Stem Cell、略称:ES細胞)を提供しています。一般に、人工多能性幹細胞(Induced Pluripotent Stem Cell、略称:iPS細胞)を含むヒト多能性幹細胞は培養が非常に難しく、幹細胞を専門に取り扱うUKSCBでも、熟練したスタッフによる手作業での製造が主体です。今後、再生医療を産業化し、多くの患者様に治療法を届けるためには、研究機関でも企業でもヒト多能性幹細胞を安定して大量に製造できるようになることが必須であり、そのためには細胞培養を自動化することが広く求められています。
 

 当社が昨年10月に開発したCellQualia™ ICP Systemは、細胞製造の品質管理についての国際的なリーダーである公益財団法人神戸医療産業都市推進機構(略称:FBRI、所在地:兵庫県神戸市、理事長:本庶佑)細胞療法研究開発センターセンター長 川真田伸先生のご指導のもと、『培養の工程全体を品質管理の対象として常に監視しながら製造し、製品の品質は工程の質で担保する』というQuality by Design (QbD)の考え方を取り入れた次世代型の自動細胞培養装置です。本年3月1日からは、FBRIの次世代細胞受託製造施設内に開設した当社ソリューションラボにて稼働を開始しており、iPS細胞や間葉系幹細胞(再生医療に用いられている別種の幹細胞)の製造の実績を積んでいます。
 

 さらに今般、UKSCBの細胞培養施設内にも同装置を設置し、人手に頼らずiPS細胞を培養し、幹細胞の専門機関であるUKSCBの細胞製造基準に則って手作業と同等の品質の細胞が自動製造できることの実証実験を開始しました。

 再生医療は従来の医薬品では治療が困難な疾患に対する次世代の治療法として期待されており、国内でも既にいくつかの製品が再生医療等製品として承認され、販売されています。今後、産業としての大きな成長が期待される有望市場ですが、製造中の微妙な条件や手順の違いが品質に大きく影響するため、現在は高度な熟練者による手作業での製造が主体となっていますが、生産の効率と安定性を高め、製造コストを軽減するためには自動化の実現が課題になっています。
 

 今回の実証実験は、細胞治療製剤の製造現場への実装の先駆けとなるものです。新たな装置の普及によって、質の良い再生医療が安価に患者様に提供できるようになることを期待しています。

※1. CellQualia ™: Cell = 細胞とQualia = 質感からの造語。当社再生医療事業のブランド名。

CellQualia Intelligent Cell Processing System(自動細胞培養装置)

CellQualia Intelligent Cell Processing System(自動細胞培養装置)

CellQualia Intelligent Cell Processing System(自動細胞培養装置)